はじめに
共通テストの場合、「解き方は合っていたのに、計算ミスで落とした……」が本当にもったいない失点となります。
ただ、答えが出るたびに計算を最初から全部チェックしていたら、時間がいくらあっても足りません。
そこで使えるのが、30秒でできる簡易検算です。
完全にミスをゼロにできる魔法の方法ではありませんが、大きいミス・致命的なミスの多くを発見できる方法です。
イメージとしては、細かい採点ではなく「怪しい答えをふるいにかけるフィルター」だと思ってください。
このブログのポッドキャストです。↓
使う前に意識したいコツ2つ
まず1つ目は、計算のスタートになる式を必ず問題用紙に手書きで書くことです。これを基準にしなければ、計算ミスをしたのかそれとも立式の段階でミスをしたのかが分からなくなってしまいます。
2つ目。検算はやりすぎると本末転倒です。
- 数値計算が重い問題 → 余り(mod)系を1〜2個
- 式変形が不安 → 代入チェックを1個
- 微積・数列の問題→ 戻す(逆向き)チェックを1個
このようにあらかじめ何をチェックするか決めておくと、本番でも迷わず早くチェックできます。
それでは、チェック方法を紹介していきましょう。
① 1の位だけもう一度計算する(10で割った余り:mod 10)
複雑な計算を全部追い直すのは大変なので、まずは1の位だけを追います。
やり方
- 足し算・引き算・掛け算は、1の位だけ計算して答えの1の位と一致するか確認。
例
\(83\times 47 + 98 \) で、答えを \(3901\) と計算して出したとします。
- 左の計算前1の位:\(3\times 7 + 8=29\) だから \(9\)
- 右の「計算後」の1の位:\(3901\) だから \(1\)
上記の場合は一致しないので、どこかで計算ミス(たとえば +98 の足し忘れなど)が起こっています。
一致していれば、少なくとも「1の位」は整合しています。
ズレていたら、どこかで計算ミスをしています。
② 桁の和でチェックする(9で割った余り:mod 9)
次は「9の検算」です。
9で割った余りは、桁の和で簡単に追えます。
やり方
- 数を「桁の和」にして(大きければさらに桁の和)、9で割った余りに直す
- 余りどうしで同じ計算をする
- 答え側も同じように余りを出して一致するか確認
例
\(37\times 48 = 1776\) をチェックします。
- \(37\):\(3+7=10\Rightarrow 1\)
- \(48\):\(4+8=12\Rightarrow 3\)
- よって左を9で割った余り:\(1\times 3=3\)
答え \(1776\) を9で割った余り:\(1+7+7+6=21\Rightarrow 3\)
一致するので、このチェックにおいてはこの計算は合っている確率が高そうです。
①(mod 10)と②(mod 9)をセットにすると、短時間のわりに見落としが減ります。
③ 偶数・奇数に着目する
「細かく合ってるか」ではなく、「性質としてあり得るか」を見る検算です。とにかく速いです。
例(偶数のある掛け算)
整数たちの掛け算の計算の中に偶数が一つでも入っていたら、結果は必ず偶数になります。
もし計算結果の1の位が奇数になっていたら、その時点でアウトです。
例(偶奇性に注目)
「偶数と偶数」「奇数と奇数」の和や差は必ず偶数になります。
一方で、異なるペア「偶数と奇数」の和や差は必ず奇数になります。
④ 垂直なベクトルを求めたら、内積を計算してみる
「垂直」や「法線ベクトル」を求める問題があれば、そのベクトルを求めた後に内積が0になるかどうかチェックしましょう。
例
\(\vec{a} = (1, 2, 3)\) に直交するベクトルとして、\(\vec{n} = (3, 0, 1)\) を計算で求めたとします。
$$
\vec{a} \cdot \vec{n} = 3+3 =6 \ne 0
$$
なので、計算間違いをしたことに気付けます。
⑤ 符号・範囲をチェックする(答えがそもそもあり得る?)
これも速いのに強いです。問題文の意味から、答えの範囲が決まることが多いからです。
- 面積・長さ・分散:0以上
- 確率:\(0\le p\le 1\)
- \(\sqrt{\phantom{x}}\):中身が 0以上(実数として扱うなら)
- \(\log(\phantom{x})\):中身が 0より大きい(正の数)
「マイナスになっても良いのか?」「1を超えても良いのか?」を一回確認するだけで、助かることがあります。
⑥ 文字に 0 や 1 など「特徴的な値」を代入する
式が合っているなら、特殊な値でも成立するはずです。
楽に計算できるので、有効な検算です。
例(面積を表す式を求めた後に)
辺の長さ \(a\) で面積 \(S(a)\) を表しているなら、普通は
\(a=0\) のとき面積も \(S(0)=0\) になってほしい(少なくとも「ならないとおかしい場面」が多い)です。
式変形の途中で不安になったら、こういう値を入れて矛盾が出ないか見てみましょう。
⑦ 不定積分したら微分して戻す
定積分では、不定積分 \(F(x)\) を作ってから数値を代入し計算に入りますが、代入計算はミスりやすいです。
その前に、微分して元の関数に戻るかだけ確認します。
例
$$
\int (3x^2+2)\,dx = x^3+2x + C
$$
微分して
$$
\frac{d}{dx}(x^3+2x)=3x^2+2
$$
元に戻ればOKです。
ここでもし間違っていたら、代入計算に進む前に止まってミスを早期発見することができます。
⑧ 数列の一般項・和が出たら、まず \(n=1\)(できれば \(n=2\) も)
一般項 \(a_n\) や和 \(S_n\) を出したら、以下のように軽くチェックすると安全です。
- \(n=1\) を代入して、初項や条件と一致するか確認
- 余裕があれば \(n=2\) も見る(1個だけだと偶然合うこともあります)
⑨ 方程式の解は、元の式に代入する
解は「条件を満たす数」のことなので、代入が一番シンプルかつ強力な検算です。
全部の式に入れ直す必要はありません。
連立なら、計算が軽そうな簡単な式にだけでも入れて成立するか見てみましょう。
例(円と直線の共有点)
「 \( x^2 + y^2 = 2 \) と \(y=-x+2\) の共有点を求めよ」という問いで、\((1, -1)\) という答えを出したとします。この値を \(y=-x+2\) に代入すると \(-1 = 1+2\) となり成立しないので、計算を間違えたことに気付けます。
⑩ 2次方程式なら「解と係数の関係(和と積)」でチェックする
2次方程式
$$
ax^2+bx+c=0
$$
の解を \(\alpha,\beta\) とすると、
$$
\alpha+\beta=-\frac{b}{a},\quad \alpha\beta=\frac{c}{a}
$$
が成り立ちます。
出した解の「和」と「積」だけ計算して、係数と一致するかを見ると速くチェックできます。
もちろん、このチェックは「数学IA」の試験で使っても構いません。
⑪ 三角関数の式変形は「特別な角」を代入して崩れてないか見る
三角の式変形は、途中で「恒等式っぽい形」(どんな \(\theta\) でも成り立つはずの式)が出てきます。
そういうときは、計算しやすい角を1〜2個入れて左右が一致するかを見るのが手早いです。
ポイントは、分母が0になる角を避けることです(特に分数や \(\tan\) が出るとき)。
例(あまり“公式っぽくない”形で出やすい恒等式)
次の等式が本当に成り立つか、代入で確認してみます。
$$
\frac{\sin\theta}{1+\cos\theta}=\frac{1-\cos\theta}{\sin\theta}
$$
たとえば \(\theta=\frac{\pi}{3}\) を入れます(\(\sin\theta\neq 0\)、\(1+\cos\theta\neq 0\) なので安全)。
- \(\sin\frac{\pi}{3}=\frac{\sqrt{3}}{2}\)、\(\cos\frac{\pi}{3}=\frac12\)
左辺:
$$
\frac{\frac{\sqrt{3}}{2}}{1+\frac12}=\frac{\frac{\sqrt{3}}{2}}{\frac32}=\frac{\sqrt{3}}{3}
$$
右辺:
$$
\frac{1-\frac12}{\frac{\sqrt{3}}{2}}=\frac{\frac12}{\frac{\sqrt{3}}{2}}=\frac{\sqrt{3}}{3}
$$
一致。
もし代入でズレたら、その等式にする前後の変形がどこかで崩れています。
⑫ 最後に「定義域」をざっと見る(分母0/ルート/ログ/問題の条件)
計算自体は合っていても、条件を落として失点することがあります。
最後にここだけ確認しておくと安心です。
- 分母が0になっていないか
- \(\sqrt{\phantom{x}}\) の中身が負になっていないか(実数なら)
- \(\log(\phantom{x})\) の中身が正になっているか
- 問題の定義域の中に入っているか(特に価格や人数などは0以上になっているか)
迷ったらこれだけをチェック(おすすめセット)
- 数値計算が重い問題:①1の位(mod10)+②桁の和(mod9)
- 式変形が不安な問題:⑥(0や1の代入)+⑤(符号・範囲)
- 微積:⑦(微分で戻す)
- 数列:⑧((n=1)、余裕があれば2)
- 2次方程式:⑩(和と積)
- ベクトル:④(内積が0)
さいごに
検算は「もう一回最初から全部計算する」ことではなく、短時間でミスの可能性を減らす作業です。
本番は時間が一番の敵なので、検算も「軽く、速く」がベストです。
おすすめは、ふだんの演習の段階で
「自分はどのミスが多いか(符号?桁?条件落ち?)」を把握して、
本番に使う検算を 2〜3個だけ決めておくことです。
検算を習慣にすると、同じ実力でも点が安定します。最後まで、点を取り切りましょう。
受験生のみなさんが自分の実力を存分に発揮できることを祈っています!